視覚障害を持つ人からの依頼があった場合。私たちはどのようなことを考えて、実際にサポートしていくか。いくつかの事例を紹介してみたい。

OSのインストール

 何かトラブルがあって、OSを再インストールしなければならないという状態はよくあることである。しかし、OSをインストールする段階では、音声ソフトが起動していないので、全盲者の場合は、ほとんどインストールの作業ができない。したがって、OSインストールのしかたの経験を持つことことが大事である場合が少なくない。ただし、ここで注意したいのが、全盲者の場合、自分だけで使うのであれば、パソコンのモニターは必要がないので、モニターを持っていないという人がいる。視覚障害者のパソボラを行うときは、サポートする現場にモニターがあるかどうかを確認し、ない場合は、モニターを持参する必要がある。音声ソフトを組み込む段階では、ソフト自身がしゃべるようになるので、まずはOSをしっかりインスト―ルすることが重要である。

ソフトウェアのインストール

 ソフトウェアのインストールは音声ソフトが動いていて、何度かインストールをした経験のある人なら、自分でだいたいインストールはできるが、ソフトウェアをインストールする段階で、シリアル番号の入力を求められて、それがわからなくてというケースも少なくない。こうした場合は、シリアル番号を確認し、点字が利用できる人は点字でメモをしてもらうなどのサポートが必要となる。最近は、インストールの方法やソフトの操作についてのマニュアルがテキストファイルやHTML型式で添付されている場合があるので、そうした場合はそれを音声で読むことでインストール等が可能になるが、ソフトの中には分厚い紙のマニュアルのみという場合も少なくない。したがって、利用者がソフトを使うにあたって最低知っておいてほしい情報を読むというようなサポートも必要になってくる。

周辺機器の増設

 パソコンを利用していると周辺機器の増設が必要になってくる場合が少なくない。まれにハンダゴテを使ってといろいろやるという人もいるが、そういうひとはまさに「まれ」で、モデムカードを増設するだけでも見えないがゆえにお手上げという人も少なくない。
 周辺機器の導入にあたっては、その機器を丁寧にさわってもらって、コネクターの状態や接続コードがどういうものであるかをよく理解してもらうと良い。また、周辺機器を利用するにあたっての基本的な事項について、マニュアルの解説をするのも大事なことである。さらに、ユーザー登録が忘れがちになる。インターネットからのユーザー登録のできるものも多いが、URLがわからないという場合もあるので、できればネットワークに接続できている場合は、URLを教えておくのもよいし、その場でいっしょに登録しておくのも良いだろう。インターネットでユーザー登録ができない場合は、その場で登録用の葉書をいっしょに書くというのもいいかもしれない。
 周辺機器の接続とディバイスドライバーの組込みを手際よくできるようにしておくことは重要である。時には、ディバイスドライバーが付属していないことがある。機器やソフトの相性の問題から、そのドライバーが使えず、インターネットのサイトからダウンロードしなければならないこともしばしばあるので、そうしたときにはモバイル端末で、アクセス出来る環境を持参すると助かることが多い。最近のノートパソコンにはFDDがついていないものもあるので、USBの外づけFDDなども用意しておくと便利である。

音声ソフトのインストールと初歩的な操作方法のサポート

 音声ソフトはたいていの場合、特殊なキーを使って操作する。特殊なキー操作でないと使用するソフトウェアが持っているキー操作とバッティングしていまい、ソフトが動作しなくなることもあり、音声が利用できなくなるからである。こうした音声ソフトのインストール作業や基本的な操作の仕方は、パソボラの役割ではないかと思う。もっともそのためには、パソボラのほうが音声ソフトに熟知している必要がある。

ソフトウェアの使い方

 ソフトウェアの使い方について教えてほしいという要望もパソボラにはかなり登場している。ソフトウェアを使いこなすというのは、非常に大事なことであるが、実は、このあたりは非常に難しいところである。というのもソフトを使うということは、何ができたら使えるということになるかという判断が難しいし、1時間から2時間程度の時間でできることではなく、場合によっては、2度、3度と継続的なサポートを必要とするからである。
 パソボラの基本は、そうした継続的なサポートではなく、ボランティアの手(視覚障害者の場合であれば目か?)がどうしても必要な緊急事態に対するサポートである。 したがって、こうした継続的なソフトの使い方に対するサポートは別途検討していく時期に来ているのではないかと思われる。ただし、それらのソフトを最低限利用する方法を伝授し、その後はソフトのヘルプメッセージなどを活用していけるようにするようなサポートはある意味でパソボラの役割ではないかと思っている。

これまでパソコンを使ったことのない人へのサポート。

 これからパソコンを買いたいが、何を買えばよいか相談に乗ってほしいという依頼は最近増えている。最近は同じ価格帯であれば、メーカーの差も少なくなってきているので、基本的には好みの問題とパソコンを使って何をしたいかで決まるともいえる。しかし、入力ということから考えるとちょっと事情が違ってくる。すでにパソコンに慣れてきている人の場合は、キーボードについての知識もあるし、操作方法もわかってきていて、パソコンのキーボードを使いこなせているが、視覚障害者の場合は、キーボードの操作がやはりわかりにくく、これでかなり苦労する。点字を知っている人なら、点字入力方式というものがあって、6本の指だけを使って入力することが可能である。パソコンをこれから購入しようとしている人や初心者の場合で点字が使える人は、この方式が有効である。しかし、この6点入力方式が利用できるキーボードはメーカーによって対応しているところと対応していないところがある。また同じメーカーでも機種によっては対応しているものもあればしていないものもある。そのあたりの確認が重要である。(IBM製品はアクセシビリティーを考えて、これまで発売してきたものは6点入力に対応している。)
 そして何よりも大事なことは、パソコンを使って何をしたいかに対する明確な目的意識をもってもらうことである。それには、パソコンで視覚障害者が何をどのようにできるかについての話題をパソボラが様々な事例として知っておく必要があるし、パソコンを使った可能性について、いっしょに考え、学んでいこうとする仲間意識の創造である。