情報モラルと著作権に係わる問題を取り上げます。

インターネット利用に係わる課題 

 情報技術の進展に伴い,インターネット等のネットワークの発展やマルチメディア対応コンピュータ等の普及が,社会のあらゆる分野に,そして私たちの日常生活にも大きな変化をもたらしてきております。学校教育においても,効果的な授業を可能にするなどの利点がありますが,その一方で,利用に係わるさまざまな問題が生じてきています。今回は,このような視点から情報モラルと著作権に係わる問題を取り上げます。

 1 情報モラルに係わる問題 

  ★  個人情報やプライバシーの侵害 
     個人の権利利益を保護する必要性があることから,個人情報保護条例等によって,個人情報の取り扱いに関する事項が定められています。また,個人情報の取り扱いに適正を欠けば,個人の権利を侵害する恐れが大きくなります。特に,学校においては児童生徒に関する情報を研究成果の発表等に利用される場合が多いため,その発表資料等から特定の個人が読みとれたりすることがないよう細心の注意を払っていく必要があります。 

 インターネット上のホームページにクラスの紹介として生徒の写真や名前を公開したところ,教育委員会から「個人情報保護条例違反」に該当するということで削除を求められるという事例があります。 

  ★  有害情報 
     インターネット上には,わいせつな情報や暴力的な情報などの有害情報と呼ばれるものも掲載されています。教育利用の観点から,これらの有害情報を遮断する「フィルタリングソフト」を導入したり,運用面での工夫をしたりするなどの方法を取っていますが,すべてを解決できる有効な対策はない状況です。 

 アメリカ等では,テレビにVチップという部品を付けることによりわいせつな映像や暴力の映像の番組を視聴できなくするなどの方法をとりながら,子供たちを有害情報に触れさせないような対策をしています。 

  ★  機密保護(セキュリティ) 
     インターネットは,TCP/IPという通信規約によって成り立っています。全世界が統ーされた通信規約を忠実に守ることで情報の共有化が図られています。この特徴を利用して,企業等のネットワークに入り込んでデータを書き換えるなどの問題が起こっています。学校では,今後,ますますインターネットの導入が進むことから,児童生徒の個人情報が外部に漏れたりすることがないよう十分な対策をしていく必要があると思われます。 

  ★  コンピュータウィルス 
     表計算ソフトウェアやワープロソフトウェア等の各種処理プログラムに進入し,プログラム本来の働きを阻害したり,壊したりするような動きをするプログラムをコンピュータウィルスと呼んでいます。コンピュータウィルスは,プログラムやデータに進入し,次から次へと感染していきます。以前は,多くの場合フロッピーディスク等を感染の媒体としていましたが,最近ではインターネットによる感染が増加しています。 


 2 著作権に係わる問題 

  ★  インターネット上のホームページに掲載されている文書,音声,画像等の利用に係る著作権法上の注意 
     インターネット上のホームページに掲載されている情報には,著作権フリーの情報もありますが,すべてがフリーというわけではありません。また,入手した情報を私的使用の目的(法的に認められた範囲)以外で利用をした場合には,著作権の侵害となりますので慎重な取り扱いが必要です。 

 ホームページに掲載されている情報をダウンロードして,研究大会の発表の資料として利用する場合には,私的使用の目的以外に該当しますので,著作権者から複製等の使用の許諾が必要となります。 

  ★  ソフトウェア利用に係わる著作権法上の注意 
     インターネット上には,いろいろなソフトウェアが存在します。このソフトウェアを自分のコンピュータに取り込んで利用することもできますが,この場合も著作権との係わりが生じます。例えば,ソフトウェアのコピー,転貸・譲渡等での問題が考えられます。フリーウェアやシェアウェアのソフトウェアをダウンロードする場合には,「利用上の注意」や「使用許諾契約書」等が記されたファイルが添付されていますので,そこに記載された条件にしたがって正しく利用する必要があります。 

まとめ 

 今回のまとめでは,教育活動において著作物を利用する場合,著作権法上注意をしなければならない点について述べてみたいと思います。
 著作権法第35条「学校その他の教育機関における複製」により,授業を担当する教員が授業の過程の中で著作物を使用する目的であるならば,必要と認められる限度で著作物を複製することができます。教育活動の中で著作物を複製して利用できる場合の例を挙げて説明をします。


1 著作物を複製し教材として利用する場合 
   著作物を複製し授業で利用する場合は,授業を担当するクラスの生徒数分を限度に,必要部数を複製し,授業で利用することができます。その際,著作物を複製する許容範囲としては,必要最小限にとどめることが望ましいです。ただし,授業の過程の中で生徒達が学習内容を理解できた
かどうかを把握するために市販されているワークブックやドリル問題集の1部または全部を生徒数分複製して確認テストに使用したり,ソフトウェアを1本だけ購入して数台分或いは生徒数分コンピュータへインストールしたりして利用することはできませんので注意をしなければなりません。
(注)コンピュータソフトウェアは,著作権法第35条の適用はほとんど認められていません。 

2 音楽の著作物を利用する場合 
   音楽の授業で合唱や楽器の演奏およびレコード鑑賞を行う場合は,著作物を許諾なしで利用することができます。また,文化祭等で演奏する場合でも同様に許諾なしで利用することができます。その場合は,演奏する曲名や作曲者名をわかるように記述しておくことが必要です。ただし,授
業の過程で使用するからといって,楽譜を1部だけ購入して演奏者数分複製をして使用することはできませんので注意をする必要があります。 

3 著作物を試験問題として複製して利用する場合 
   定期考査で著作物を利用して試験問題を作成する場合は,授業の過程の中で児童生徒が学習内容を理解できたかどうかの学識技能に関する試験と考えられるため,著作者に許諾なしで利用することができます。また,試験問題において,その著作物の作品名または作者名を問うような設問以外の場合には,必ず出所の明示をしなければなりません。ただし,試験問題に穴埋め問題を作成するような場合には,同一性保持権の侵害にならないよう注意をする必要があります。 

4 教育番組を録画して利用する場合 
   授業の過程の中で利用するために,テレビの番組等を録画して活用することは認められていますが,ライブラリー化して保管することは著作権の侵害となる恐れもありますので注意をする必要があります。なお,録画したビデオ等については,授業が終了したならば録画した内容を消去し
ておくことが望ましいです。 

 以上のような例から考えると,私たち教員は,著作物を利用する際誤った解釈をして,営利目的ではなく教育目的で著作物を利用するのであるから許されるはずだという,安易な考え方をしないよう十分な注意を払っていかなければならないと思います。
 次に,インターネットを利用した場合における著作権等を含めた問題点について,例を挙げて説明をします。

5 ホームページに掲載する著作物について 
   私的使用の目的という理由で,書籍等に掲載されている写真を著作者に許諾を得ないで,スキャナで取り込んでホームページに掲載したり,あるホームページ上に掲載されていた画像が気に入ったので,それを無断でダウンロードをしてホームページ作成に利用したりすることは,著作権の侵害となる場合がありますので注意する必要があります。また,許諾を得た画像等については,色を変えたり,トリミングする等の編集を加えて利用すると同一性保持権の侵害になりますので注意をしなければなりません。 

6 個人情報とプライバシーの侵害について 
   児童生徒の個人情報の管理については,細心の注意を払う必要があります。例えば,児童生徒に関する情報が研究成果の発表等に利用される場合が多いため,その発表資料等から特定の個人が読みとれたりすることがないよう配慮したり,各児童生徒の性格や身体及び成績等のデータをコンピュータのハードディスクへ保存をせず,MOディスク等を利用して管理をしたりするなど運営方法にも注意を払っていく必要があります。 

 インターネットを利用した授業は,今後ますます活発になると予想されるため,著作権の正しい認識やプライバシーの保護等に関する情報モラルの育成を学校教育の中で児童生徒の発達段階に応じて計画的に実施していかなければならないと思います。 


 著作物の利用に関する相談及び利用許諾についての主な問い合わせ先は,下表のとおりです。

問い合わせ先
文化庁著作権課 著作権施策の取りまとめ,その他窓口に関すること 03-3581-4211 
日本音楽著作権協会 音楽の利用許諾に関すること 03-3481-2121 
日本文芸著作権保護同盟 小説などの利用許諾に関すること 03-3265-9658 
日本美術家連盟 美術作品の著作権に関すること 03-3542-2581 
(社)著作権情報センター 著作権に関する事項全般 03-5353-6922 
全日本写真著作者同盟 写真の著作権に関すること 03-3365-7451 
日本複写権センター 書籍,雑誌等のコピーの許諾に関すること 03-3401-2382 
コンピュータソフトウェア著作権協会 ソフトウェアの著作権に関すること 03-5976-5175 
ソフトウェア情報センター コンピュータソフトウェアの著作物に係わる登録に関すること 03-3437-3071 
(社)映像文化製作者連盟 教育映画の著作権に関すること 03-3501-0236 

情報モラルに関するURLの紹介